どんな君でも愛してる
「瑠璃ちゃん?瑠璃ちゃん?」

「えっ……あっすみません。」

「瑠璃ちゃんも永崎さんも、こちらに。」

 総帥に呼ばれてハッとした瑠璃と奏子は、みんなのいるソファー席に座るように言われ、席を詰めてもらい端の方に腰をおろした。

「少し昔話をいいかな?」

 皆にそう訪ねると、総帥はゆっくりと自分の生い立ちを話さし出した。

「私は皆が知っているように、独身だ。親戚はいても、もう今は両親もいないし、兄弟もいない。でも、かつて心から愛した女性がいた。いや、今でも愛してる。私は小さいときの発熱が原因で子どもは難しいと判断された過去がある。それは二十歳の時だった。両親は俺のあとは、俺の子どもに継がせたいと言っていたから、すごく落胆し、彼女とも別れてしまった。その後は、ひたすら仕事をし、事業を大きくした。そんな時、彼女と街中ですれ違ったんだ。私に似た男の子を連れていた。」

 そこまで話すと、みんな驚きのあまり息を飲んだ。

「つまり、私には後継者がいたと言うことだ。」

ー後継者がいた。いる?じゃなくて。ー

 全員が同じことを考えているに違いない。八木は、皆の顔を見ながら、瑠璃の表情を気にしていた。
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