恋人は魔王様
力でかなわないのを見て、大人しくなった私の頬にキョウが唇付ける。

「淋しかったよ、ユリア」

だーかーら。
私を振ったのはアナタでしょう?

「ゴメンね、どうしても戦争勃発になりそうだったんで。
さすがに一日じゃ片がつかなかったんだ。
あの日は嘘をついてゴメン」

いやいや、私が怒ってるのはそこじゃなくてですねぇ?
あまりに軽く『昨日一緒に映画見にいけなくてごめんね、急に上司から残業命じられてさぁ。アイツもうすぐ定年退職だからってここぞとばかりに威張るんだよね、本当にゴメン』っていうサラリーマンくらいのテンションで、キョウが謝ってくるので、私はなんていったらよいのか言葉を失う。

「ユリア。どうして、そんなに拗ねてるの?
お願いだから、唇にキスさせて?」

耳元で、甘い声が私を誘う。
その声だけで、胸がキュンと疼く。

枯れたはずの涙がまた、頬を伝って溢れてきた。

「だって……私を振ったのはキョウでしょう?!」

「だから、どうしてそうなるの?」

「だって、ママにメールしたじゃん。
それに、私から指輪も取り上げたじゃない!」

「指輪?どうして。
まだ、ここにあるよ」

キョウが私の左の薬指を触る。

「嘘、何もないもんっ」

「……見えなくなったから、使ってくれなかったのか。困った子だな」

キョウは強引に私の顎に手を掛けて、唇に深いキスをした。
それは、心も身体も蕩けそうなほど上手なキスで……!!

って、キスを味わっている場合じゃないってば。
私ったら。
コイツは別れた男なんだから。

分かりやすく言ったら元カレよ、元カレ!!
頼むよ、百合亜。

私は自分に言い聞かせる。
悪魔にこれ以上弄ばれちゃ、駄目!!
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