この恋が罪だとしても



「うぅっ……」


さっきまでここにいた泉くんの姿はもう無い。

それに、ポロポロと涙が溢れてしまった。


「ごめんなさいっ……」


好きになったりして……。


「ありがとうっ……」


好きになってくれて……。

夕暮れの音楽室に、私の声だけが響き渡った。


両想いだと分かったのに私は……泉くんに答えることが怖い。

一度知った幸せが消えてしまうのが怖い。


「好きなのに……」


また、拒絶されることを想像してしまう。

私の恋が誰かを傷つけることが、怖くてたまらないんだ。


どうしたら……いいんだろう。


この胸の中にある気持ちは、たった一つキミへの恋なのに、何を捨てて、何を選べばいいのか……。


でも、もし……もし、この気持ちに素直になってもいいのなら……。


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