豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「あ、あの、玲」

どうして声が震えちゃったんだろう。
今、何を考えているのか分からない玲のことが、ちょっとだけ怖かったのかもしれない。

玲に掴まれた手首が、ぎり、と鳴った。痛い。けど、それどころじゃない。

「あの男としたこと、全部上書きしてやる」

玲が低い声で唸った。

上書きってどういうこと? 何する気?

その質問が言葉になる前に。
玲が、私の唇に噛みついてきた。

「んむっ」

唇が、チクリとした。ほんのり血の香りがするも、玲の舌が一舐めしてそれを掻き消した。

びっくりするぐらい乱暴に、口の中が掻き混ぜられる。
まるで八つ当たりされてるみたいに。
めちゃくちゃって言葉が一番しっくりくるくらい、玲は何度も何度も口付けて乱した。

私の上に乗っかってる玲の重みとか、ベッドに押し付けられた腕の痛みとか、そういうものが全部吹き飛んで。
頭の中が、唇の感触、ただそれだけになった。

嫌なのかどうかもよく分からないくらい混乱してしまって。
息をするのも忘れて、凍りついてしまっていた。


「――比奈」

口づけの合間を縫って、吐息と共に私の名前が漏れる。
甘く情熱的な声で呼んでもらえるのが、こんなときなのに、なんだかとっても嬉しく感じられて。
粗雑な扱いに充足感を感じてしまった私は狂っているのだろうか。

疑問と恐怖と喜びが交錯する。
今のこの状況は、一体何なんだ。


玲の手が私の腕から離れて、身体を下へなぞっていく。
ニットの裾から中へ潜り込み、お腹に触れる。

ぞくっとした。
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