豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「玲……どうしちゃったの?」

まさか。このご馳走でさっきの過ちを水に流せって言ってる?

「お前はこういう料理が好きなんだろう? さぁ食え。いくらでも太るがいい」

冷ややかに見下す玲。悪魔のような顔つき。美し過ぎて、余計に怖い。

え?
ひょっとして、懺悔じゃなくて、単なる嫌がらせ?
私のこと、恨んでるの? 太らせて、恨み晴らそうとしてる?

なによそれ……
じわじわと怒りが込み上げてきた。

人が心配して『なかったことにしてもいい』とまで言ってやったのに。
人生の中で、片手に収まるくらいしかしたことなかった貴重な経験を、なかったことにするとまで言ったのに。

私、嬉しかったのに。
玲がしてくれて、嬉しかったのに。

なのにこの仕打ち。

酷いよ。

爆発したのは、怒りじゃなくて、涙だった。

「うっ……ふぇぇん……」
「な、なんで泣くんだ!? 嬉しいのか?」
「違うよ馬鹿ぁあぁぁぁぁ!!!」
「なっ!」

再び大泣きしだした私に、困惑する玲。

「こういう料理が好きだったんじゃないのか!?」
「好きだよ! いただきますぅ……ふえっぇええぇえん……」
「なら、どうして泣くんだ!」
「だってぇ、玲がぁぁ! 意地悪する!」
「俺は……単純に、お前を喜ばせようと……」
「ほぇ?」

玲を見上げると、少し頬を赤くした綺麗な顔があった。
恥ずかしそうに目を伏せる。
え? なんで?
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