豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「い、いらない」
「何故だ。甘い物が大好きなんだろう」
「玲こそ、ちょっと前まで、あれだけ体重体重って甘い物禁止させてたのに、今さらどういう風の吹き回し!?」
「お前は、抑圧すると反動で浮気するらしいからな」

だから誤解だってバ。

「なんか気持ち悪い。優しい玲、怖い」
「お前、人の優しさを一体何だと」
「いつもの玲でいい。ムカつく玲でいい」
「……本当に、いいんだな」

玲の声が、心なしか低くなった。
私の手の中から、レアチーズトリュフマカロンの紙袋がひょいっと持ち上げられる。

「あっ」
「これは俺が処分する。お前は食うな。これ以上太りたいのか」
「ひ、酷い! 目の前にちらつかせといて没収するなんて!」
「いつもの俺が好きなんだろう」

ニヤリ、と、玲が意地悪く笑う。

「悪魔! 鬼! 鬼畜! Sだね! あんた生粋のSだね!」
「何とでも言え」
「前言撤回する! やっぱり優しい玲が良い!」
「今さら遅い」
「えーん、待ってよぉー、レアチーズトリュフマカロンー!」

私は玲の後ろ姿に飛びついた。
玲が、紙袋を持つ手を高いところに上げて、私の背が届かないようにする。

「お願いだよぉ、一口でいいからちょうだい! 一緒に食べようよぉ」
「駄目だ。全て跡形もなく俺の腹に収めてやるから、お前は忘れろ」
「お願い! お願い~、お~ね~が~い~!」


私と玲の関係で、少しだけ変わったことがある。


私が涙目で玲の瞳を見上げると。
玲はふと口元を緩ませて。
私の額にひとつ、優しい口づけを落とす。


玲の私を見る目が、犬から女性へとランクアップした。
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