もう一度だけでも逢えるなら
 業務開始から三十分後、部長が席を立ち、オフィスから出ていった。

 私も席から立ち上がった。

「みなさん、私の話を聞いてください」

 私の声に反応して、顔を上げた人もいれば、黙々と業務をこなしている人もいる。

 全員が私の話を聞いてくれなければ意味がない。

「みなさん! 私の話を聞いてください!」
 今度は大きな声で言ってみた。

 オフィス全体に響き渡るような大きな声で。

 みんな私の方に視線を向けてくれた。

「今日は、定時で帰りましょう」

 私のひと言で、経理部のオフィス内は一気にざわついた。

 急に何を言ってるんだ。と言わんばかりの表情を浮かべている人ばかり。

 一分一秒も無駄にできないので、話は簡潔に。

「全員で定時に帰ることが、部長を懲らしめる手段の一つだと思います。そのためには、みんなで力を合わせて頑張るしかありません。何がなんでも絶対に定時に帰りましょう!」
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