もう一度だけでも逢えるなら
「それじゃあ、仕事に行ってくるね」
 まなちゃんへのお出かけの挨拶は欠かさない。

「にゃあ」
 まなちゃんに見送られ、私はアパートを飛び出した。

 今日も朝から真夏の太陽の日差しがギラギラ。

 あまりの眩しさに、一瞬立ちくらみ。

 今日もメガネを掛け忘れて家を出てしまった。

 アパートの階段を下りたところで私は気づく。

 うっかり者の自分が嫌になるけど仕方がない。

 慌てず急がず、ゆっくりとアパートの階段を上がって、早くも帰宅。

「ただいま!」

「にゃあ」

「またメガネを忘れたのよ」

「にゃあ」

 昨日と全く同じやり取り。過去に戻ったような気分。紀文は、はんぺんの製造メーカー。そんなことは別にどうだっていい。

 今日は、赤色のメガネをチョイス。幸運の赤メガネ。自分でそう思っているだけ。赤色のメガネを掛けても、別に良いことはない。
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