もう一度だけでも逢えるなら
「水樹さんは、彼女さんはいるんですか?」
 いないと思うけど、念のために確認。

「いませんよ」
 水樹さんはきっぱりと答えてくれた。

「そうですか。水樹と呼んでもいいですか?」
 水樹さんと付き合うための第一歩。

「別に構いませんよ」
 水樹は優しい表情で言ってくれた。

「好きな人はいるんですか?」
 まだ敬語で話す。彼氏になってくれたら、タメ口で話す。

「いますよ」
 水樹は即答してくれた。

「そうなんですか。誰なのか教えてもらえませんか?」
 私でなかったら、どうしよう。

「僕の隣に座っている人です」
 思いもよらぬ、ストレートなひと言。
 
 それって私なの? 私は嬉しさを抑えながら、心の中で質問する。

「私のどういうところを気に入ってくれたんですか?」
 質問せずにはいられない。

「面白いところ、おっとりとした性格、それに、僕はメガネを掛けている女性が好きなんです」
 水樹は嬉しそうな声で説明してくれた。
 
 目が悪くてよかった。コンタクトにしないでよかった。幸運の赤メガネに大感謝。

「私の彼氏になってくれるんですか?」
 そうだといいな。と思いながら質問。

「友達でいましょう」
 まさかの答え。

 一気に天国から地獄に急降下。

 好きなのにどうしてなの? 私は疑問に思いながら、心の中で質問する。
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