桜の咲く頃
いつの日か君は、僕に言ったよね


泣きながら

「死にたくないよ……」

って





『死』という恐怖に君はとても恐れを抱いていた

あの悲しい瞳はそういう事だったんだ


その日僕は君の話を

ずっと

ずっと

聴き続けた


かけてあげるコトバが無いから

聴くことしかできない



許してね




彼女によると、心臓の病気らしい

もともと産まれた時から

体も弱く、走ったり遊んだりすることができなかった

それでも彼女は病気と戦った

そしてこの春高校へと入学

希望の光が見えた気がしたんだ



でも

やっぱりダメだった



急に症状が悪化

入院生活を余儀なくされた



見えていた希望の光は

消えてしまった…



「私ね、やっと普通の女の子になれるかなって期待してたの。でも逆戻り。ううん…もっと最悪かもしれない」

めいいっぱい走ってみたかった

おしゃれだってしたかった

友達ともっと遊びたかった

好きな人も作りたかった




彼女の口からは後悔ばかりが出てきた




それでも君は最後に笑顔に戻って

「聞いてくれてありがとう」

そう言ったよね


君は心の強い子だ

まだそうやって笑えるんだから


君はきっとまだ頑張れる

諦めちゃダメだ



希望の光なんて

自分で造ればいい


造れなかったら僕も手伝おう

約束するよ


君を応援し続ける

だから話したくなったら

またおいで






彼女の髪に桜の花びらが落ちた


< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop