桜の咲く頃
あの日から彼女は

毎日僕に話しかける


家族のこと

友達のこと

勉強のこと

病院のこと


いつもいつも違う話題

おしゃべりが本当は好きなんだね?

でも、病院に話し相手がいないから

ここに来る


僕は君の話相手になれてるんだろうか

ちょっと不安かも


でもちょっと安心かな

あの日から君は泣いていないから

ほら、やっぱり強い子なんだよ


僕の勘違いかもしれないけど

初めて君を見かけた日より

前を観て少しずつ、しっかり歩んでいる

そんな気がするよ


君の力になれてたらいいな







「もうすぐ…あなたともサヨナラしなくちゃいけないな〜」

彼女は僕に背を向けて言った


え?

それってもう会えないってこと?

君はどこかに行ってしまうの?


「ちょっと頑張ってみようかなって思って…。もうここには来れないかな…」


つまり、手術をするってこと?

だからしばらく来れない

そういうこと

だよね?


『もうここには来れない』なんて

寂しいこと言わないでよ


絶対病気に勝って帰ってきてよ…

ぼくはずっとここにいるから









この日を境に

彼女は来なくなった








僕はまだ希望を失ってない

僕が彼女を信じるかぎりは

少しの希望だって失わない


だって約束したでしょ?

希望の光を造る手伝いをするって




いつまでだって待ってる

この花が散るまでは


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