すきなひと



「……何色にしようか迷う」


瞬の言葉に首を傾げる。


夕日が沈む海に足をつけ、手をつないだ小さな男の子と女の子の後姿。そして周りにはたくさんのひまわりが咲いていた。

まだ白いひまわり。


私の知るその花は黄色い。


でもそれを口には出さない。


そんな瞬の世界観が好きだからだ。


「黄色はなー、違う気ぃすんだよなぁ」


よっ。


小さく声をあげて瞬が起き上がる。変わらない気だるげな姿は、猫に似ていた。

瞬は少し猫背だから余計だ。


その上頭は整髪剤をつけておらず、今まで寝ていたせいかボサボサだ。ボサボサのくせに、私なんかよりずっとサラサラでムカつく。



彼の顔は眠そうに歪められていて、もはや猫にしか見えない。

私は放課後にこいつを迎えに来るのが習慣になっている。


瞬はアイディアがつきたり、悩んだり、集中がきれたりすると、すぐに横になる。

そしてそのまま寝る。

そう、まさに泥のように。

だからこうして起こしにこないと、下手したら朝まで起きないのだ。


だけど気分が乗っているときや、一度集中した時はすごい。


何時間もキャンパスと見つめあって、周りの音も聞こえないほどだ。


なんというか、波が激しい。


普段から自由人でマイペースだけど、絵を描くときも例外ではないらしい。

< 5 / 40 >

この作品をシェア

pagetop