すきなひと
「……何色にしようか迷う」
瞬の言葉に首を傾げる。
夕日が沈む海に足をつけ、手をつないだ小さな男の子と女の子の後姿。そして周りにはたくさんのひまわりが咲いていた。
まだ白いひまわり。
私の知るその花は黄色い。
でもそれを口には出さない。
そんな瞬の世界観が好きだからだ。
「黄色はなー、違う気ぃすんだよなぁ」
よっ。
小さく声をあげて瞬が起き上がる。変わらない気だるげな姿は、猫に似ていた。
瞬は少し猫背だから余計だ。
その上頭は整髪剤をつけておらず、今まで寝ていたせいかボサボサだ。ボサボサのくせに、私なんかよりずっとサラサラでムカつく。
彼の顔は眠そうに歪められていて、もはや猫にしか見えない。
私は放課後にこいつを迎えに来るのが習慣になっている。
瞬はアイディアがつきたり、悩んだり、集中がきれたりすると、すぐに横になる。
そしてそのまま寝る。
そう、まさに泥のように。
だからこうして起こしにこないと、下手したら朝まで起きないのだ。
だけど気分が乗っているときや、一度集中した時はすごい。
何時間もキャンパスと見つめあって、周りの音も聞こえないほどだ。
なんというか、波が激しい。
普段から自由人でマイペースだけど、絵を描くときも例外ではないらしい。