一輪の花を君に。
ーside美空ー


私は、部屋にギターを置いてから七瀬先生の部屋に向かった。



部屋の前へ来ると、少し扉を開けることに抵抗してしまう。




やっぱり、怒ってるのかな…?




しばらく考えてから、覚悟を決めて扉を開けた。



部屋に入ると、案の定先生は少し心配そうな表情している。




やっちゃったな。




先生に何も相談とかしてなかったからね。




完全に私が悪い。





でも、七瀬先生は怒るどころかいきなり私を抱きしめた。






「ちょっと!」





身体が一瞬こわばったことが分かった。





「美空、大丈夫。怒ってないから。」





先生は、私が中々この部屋に入れなかったことや、さっき身体がこわばったことに気付いていた。




「それなら、どうしたんですか?」




いつも冷静な七瀬先生が、こういうことをするのは初めてのことだった。





「先生ね、美空の病気のことも心配だけど、でもそれだけじゃないんだよね。気づいたら美空に対して母性本能なのかな。勝手に娘って思ってたんだ。だから、娘の旅立ちみたいで寂しくて。」



七瀬先生は私を抱きしめながらそう言った。



たしかに、七瀬先生にはほかの子供達以上に、私はお世話になった。



だから私も七瀬先生に対しては特別な感情がある。


でも、さすがに母親として見た事はなかったかな。
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