一輪の花を君に。
「美空、俺は医者である前に、1人の男として美空のことを支えていく。」




「何言ってんの?」



「俺は、表面だけの優しさだったら、そんな責任のあることを軽々しく言えない。」





回りくどい言い方してしまった。




だけど、これだけは分かってほしい。




これからも、美空の傍で支えることができるためなら、俺は何だってしたい。




もう、『大人』を一括りにして考えてほしくない。




美空を支える大人は、施設の職員だけじゃない。





俺も、美空を守っていく。





「ほら。美空、もう帰ろう?」




「身体、随分と冷えきってるな。」




美空の、肌に少しだけ触れて確認ができた。





体温を確認した時、美空は怖がることはなかった。



少しずつ、変化が見られていることが嬉しい。




本人は、自分の成長に気付いていないんだろうけど。





きっと、彼女の心の中でも葛藤している。




だからこそ、真剣に向き合ってくれているんだよな。




戸惑いながらも、しっかり受け入れようと頑張ってくれている。




「美空、帰ったら保健室に来て。」




「またですか?」




「身体が、随分と冷えきっているから。温まるまででいいから。」





「分かりました。」




美空は、少し呆れながらもギターを部屋へ置き保健室に来てくれた。
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