柏木達也の憂い
「あ、もう、ほんと課長うるさい。これで、しばらくは仕事以外のこと考えなくてよくなるからラッキーなんです」
強気にそう言い返しているけど、やっぱりどこか淋しそうな雰囲気が漂っている。俺ならそんなこと言わないのに。
むしろ真剣に仕事している美智子さんが好きなのに、そんな気持ちが溢れていた。
その飲み会の帰り道、2次会に向かうメンバーの輪から抜け出して美智子さんを追っていた。
駅の手前で美智子さんを見つけて、思わずその細い腕を引いた。
「きゃっ」
びっくりした声を上げて振り返った美智子さんは、俺の顔を認めてほっとしたように息をつく。
「あ、すみません。いきなり」
謝りながらも、とりあえず追いかけてしまっただけなので、どうしようか何も考えてなかった。言葉を続けられずにいると
「どうした?忘れ物でもしてたかな?」
首をかしげられた。