柏木達也の憂い
いつもなら
「図面じゃなくって美智子さん見てたい」
とかいっても
「ちゃんと仕事した後でね」
って宥められるのに。
その美智子さんが、こんなこと言ってくれるなんて嬉しすぎて仕事なんて明日にまわせばいい、瞬時にそう自分自身に言い訳をした。
「もう止める。だから、美智子さんとこ行ってもいい?」
甘えるような口づけを落としながら聞くと、頷いてくれた。この甘ったるい時間に舞い上がっていて、俺は多分大事なサインを見逃してたんだ。
だけどバカな俺は、最近美智子さんが甘えてくれてかわいいな、そんなくらいにしか思ってなかった。
美智子さんに認めてもらいたい、そんな一心でその夜からはコンペに向けて美智子さんに仕事以外で会う暇もないくらいに集中していた。