甘い媚薬はPoison
それでも、一刻も早くここから離れたかった。
リビングに行ってバッグを手に取ると、蓮くんのマンションを後にする。
バッグの中からスマホを取り出して画面を見れば、時刻は午前五時過ぎ。
空はいくぶん明るくなったが、朝早いせいか肌寒い。
気だるい身体にムチ打って人通りの少ない道を通り、最寄り駅まで歩く。
母親には会社の飲み会があるから蓮くんの家に泊まると伝えていたし、こんな時間に家に帰るつもりはなかった。
今の私を見たら両親は心配するだろう。
駅の近くにある二十四時間営業のファーストフード店に入り、コーヒーを頼んで窓際の席に座る。
いつもコーヒーにはミルクをたっぷり入れるが、今日はそんな気分になれずブラックのまま飲んだ。
コーヒーの苦さが身体にしみる。
自分のしたことを罰したい気分だった。
あの香水はもう使っちゃダメだ。もう二度と使わない。
媚薬の効果はいつまで続くのだろう?
出来れば会社を休みたいけど、恋愛問題で会社休むなんて無責任な真似はいくら私でもしない。
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