エリート上司の甘い誘惑

とくとくとく、と少し早いリズムで鼓動が鳴る。
それが心地よい、と思うようになったのは、ドキドキすることに慣らされて来たからだろうか。


不意に、藤堂部長が口にした。



「好きな女なら、いる」

「え?」

「”彼女”の次に来る質問と言えば、”好きな女”だろう」



ちく、と細い針で突かれたような痛みが、胸にあった。


私のマフラーを引っ掻けていた指が離れていき、一瞬止まっていた足が再び動き始める。
タクシー乗り場に着いてしまうのがなぜか寂しくて、わざとヒールの具合が悪いフリをして何度か立ち止まりながら。



「どんな人ですか。なんか、イメージ的に仕事の出来る絶世の美女しか頭に浮かびません」



茶化すように、明るい声で言った。
実際、部長に似合いそうな人となるとどうしても”デキる美女”しか想像できない。
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