エリート上司の甘い誘惑
「そんな女、うちにいたか?」

「ええっ、酷い。部長、今のは私達に対する侮辱ですよ」

「デキのいい綺麗な女が”選ばれる”とは限らないだろ」



お前の言葉を借りるなら、と笑った。



「普通だ」

「ふつう」

「一途で健気で可愛い、普通の女」



一途で健気で可愛い、が”普通”になるのか。
課長の中ではそもそも”普通”が、私が思う普通よりスペックが高いんだろうか。



「あれ……うちに、ってことはうちの社員……」



ふとその事に気が付くと、ちくちくちく、と胸を刺す針が増えた。
更には、同じ課だったり、するのかな。


さっきまではタクシー乗り場がもっと遠ければいいのにと思うくらいに、部長と話しをすることが楽しかったのに。


今はもう目の前に見えていて、話を続けずにすむことにほっとした。


待っている人はいないけど、タクシーも出払っているようだ。
その時、バッグの中にある携帯が何度目かの着信を知らせた。



「すみません、ちょっといいですか」



手にした携帯の画面に表示された名前に、つい眉を顰め、目が細くなる。

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