エリート上司の甘い誘惑

今夜の店で、三軒目だった。
お酒の種類も豊富な店で一番最初に東屋くんが目を付けていた店だ。


飲み放題プランでも酎ハイだけでも女子が喜びそうなジュース割りの種類が多く、果実酒なども選べる。


カウンターで店主と交渉しながらの食事だったが、料理も華やかで美味しい。
大人数なら料理の品数も一品サービスするという店主の言葉で即決となった。


日程ギリギリだったため、予約もすでにたくさん入っている様子だったが、辛うじて大座敷が一つ空いていたので助かった。



「良かったね。料理、これだけあれば足りるよね?」

「充分でしょう。足りない連中は個人でオーダーしてもらえばいいし」



忘年会で出される料理のメニュー表を二人で見ながら、再度確認し合う。
女子には、多すぎるくらいの品数だったから、それでうまくバランスが取れるだろう。

やっと一つ、肩の荷が下りたといったところだ。
後は、会費を集めてお店と開始時間を皆に伝えればいいだけ。



「これでやっと純粋に食事が楽しめますね」



美味しいですよ、これ。
と、隣から差し出された皿に急に、互いの距離が今日は近いことに気が付く。


いつもはテーブル席なのに、今日はお店の雰囲気も良かったことから最初から店主と交渉するつもりでカウンターに座ったのだ。



「あ。ほんとだ。美味しいね」

「ね」



意識しないようにした。
けど、皿を差し出したりグラスを取ったりするたびに手や肩が触れそうで、なんだか急に……窮屈でしょうがない。



「どうかした? さよさん今日は静かだね」

「え。そう? そんなことないけど。ご飯が美味しいから」



隣からじっと私を見る目には気づかないフリをして、ついぱくぱくと早いペースで箸を動かす。


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