エリート上司の甘い誘惑
逃げ遅れたな
◇



お昼休み、給湯室だ。
食後のコーヒーを淹れている最中、東屋くんがひょっこり顔を出す。



「さよさん、男側全員出席で会費集まったよ」

「ありがとう。こっちも集まった。正確な人数お店に伝えて、後は当日だね」



とことこと近寄って来るから、彼もコーヒーを欲しいのだろうと彼の分のカップを出した。



「俺が連絡しときますよ」

「ほんとに?ありがとう」

「なので忘年会の後、二人で打ち上げしませんか」

「しません」

「即答だよ」



あれから、東屋くんは全く変わらずだ。
驚くほどにいつも通りだ。


もしかしたらちょっと気まずくなったりするかなとも思ったけれど、そんなことは欠片もなかった。


サーバーからカップにコーヒーを移していくと、一層強く香りが漂う。
彼のカップに一番に注いでも、彼は私の隣から動かない。



「じゃあ、クリスマスはお暇ですか」

「あのね」



答えづらいわ!


暇に決まってるけど認めるのは癪だし、それに。



「もしまだ空いてたら、俺とデートしませんか」



こう言われると、わかりきってるんだから。
打ち上げを断るのに、クリスマスデートを了承するとなぜ思うのだろうか。


っていうか。



「まだって何、まだって」

「暇なんですか?」

「暇だけど! 行きません!」

「そっか、まだか」



そう言うと、東屋くんは断られたにもかかわらずほんの少し、嬉しそうに笑う。
やっとカップを手に取ると、いただきますと自分の仕事に戻っていった。



「何なのよ」

< 138 / 217 >

この作品をシェア

pagetop