エリート上司の甘い誘惑
 

ほんと、よく食べるなあ。
と、確か研修中にランチを二人で食べた時も、そう思ったのを思い出した。


看板メニューということで、二人とも牛肉のカツレツをそれぞれ頼み、それ以外にも彼はサラダと、ピザをオーダーした。


「ここの、結構量が多いんでシェアしましょうね」


と言って、好みのものを私に決めさせてくれたけど、はっきり言ってカツレツだけでも結構なボリュームがあり、私はサラダとピザはちょっと味見した程度だ。


決してガツガツとした印象ではないけど、まあよく食べる。


「やっぱ若いなあ」

「二つしか違わないじゃないですか」


子ども扱いされたとでも思ったのか、少しむっとした表情で私を見る。


「やー、二年前は私ももうちょっと食べれた気がするわ」

「ってか、さよさん最近痩せてないですか。もっと食べてくださいよ、ほら」

「えー」


取り皿に強制的にピザが一枚乗せられた。
チーズとトマトとバジルの、シンプルなピザだし食べれないことはないけれど。


ああ、そうだ。
昨日の結婚式の為に、ダイエットもしていたのだ。


そのせいで、胃が縮んでいるのかもしれない。


負け犬女の見栄ってやつだ、と気が付けばなんだかすごく馬鹿馬鹿しくなった。


「…………食べる」

「はい。ここ、デザートも美味しくて女の子に人気あるんですよ」


ほら見て、とデザートメニューのプレートを私に向かって広げて見せる。
随分、機嫌が良さそうだけれど。


「それは後で見るけど。悩みがあったんじゃないの?」


さっきから少しもその話題が出てこない。

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