エリート上司の甘い誘惑
園田に迫られて困っているように見えたから、助けてくれただけだろうか。
話はどこから聞いてたんだろう。
「なら、いい。コーヒーもらっていくぞ」
自分のカップを取って戻ろうとする、その背中を呼び止める。
「あの。部長」
「ん?」
「その……話、聞いてましたか」
「いや、今来たとこだ」
たまたま通りがかったら揉めていた、ということなんだろうか。
でも、部長が給湯室に近づくことなんて今まであまりなかったけれど。
部長にまで、園田との関係を知られてたりしたら、嫌だ。
「大丈夫か」以外の質問がないのはなんでだろう。
聞かないことが不自然だと、そう思いたくなるくらいあっさりとその背中は離れていった。
◇
その後、仕事は何事もなく終業時刻を迎えた。
私達の待ち合わせは、駅近くの時計台が暗黙の了解のようになっている。
場所は何も言わなくても、時間さえ決まればそこに集合。
「いて! いだだだだ何すんですかさよさん!」
「いや……なんか説教ぽくした方がいいような気がして」
ちょっと屈んで、と言うと不思議そうにしながらもほいほいと腰を屈める東屋くんの両耳に手を伸ばし、引っ張った。
痛い痛いと眉を顰める整った顔を目の前に、未だ耳は私の両手にある。
東屋くんのことだから、何か気を遣って黙っていたのだと思うけど。
「私と園田さんのこと、なんで知ってるの?」