エリート上司の甘い誘惑

私が尋ねると、東屋くんは少し瞠目し、それから眉を顰めて目線を逸らした。


あ、なんか考えてる。
なんか色々考えてんな、と思って見ていたら、今度ははっと何かに気づいて眉を吊り上げた。


「な、何かあったんですか、今日」

「久しぶりに園田と話しただけ。別に大したことはなかったわよ、部長が途中で来てくれたし」


ぴく、と東屋くんの眉毛が引き攣る。
なんて感情表現豊かな眉毛だろう、普段こんな真正面からじっと見ることないから気付かなかったわ。


「やっぱなんかあったんじゃないすか。しかもよりによって部長が助けに入るなんて」

「何よよりによってって」

「だってさよさん部長尊敬してるから」

「してるわよ当たり前。部長はたまたま通りがかっただけだしそれより質問に答えなさいよ」


追及すると、ぐっと彼は一度、言葉に詰まった。
何か余程言いづらいシーンでも見られたのかと、私の眉根も訝しく寄る。


けれど東屋くんの言葉は私の予測とはまるで違っていて。


「……見てたらわかりますよ。俺、さよさんのことずっと見てたし」


せつなく目を細めた。
その表情に、心臓が驚いて大きく跳ねる。


「あ、東屋くん……」


そんなに。
そんなに前から、私のこと、見ててくれたの?



……なんて。
言うと思ったか!


ぎゅ!
っと手の中の耳をもう一度、強く握った。


「いだだだだだ!」

「私を見てるだけで、園田に食って掛かるほど確信持つわけないでしょうが少女マンガじゃあるまいし! 具体的に何を見たのかって聞いてんの!」


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