エリート上司の甘い誘惑
「あー、息が酒臭い!」
今回は、私が奢る番。
会計を済ませて二人で店を出ると、ふわふわと雪が舞い始めており、ひやりとした空気が肌に気持ち良い。
「さよさん、今日はちゃんと家まで送らせてよ」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃないよ、かなり酔ってるよ」
少し足元は覚束ないけれど、意識はしっかりしてるし問題ないんだけどな。
……と、いうか。
今日は、あまり帰りたくない。
あのバー、やっぱり行っちゃダメかなあ。
でもカクテルはもう飲めないな、明日に響く。
あの日もそうだ。
帰って、あの部屋に一人になるのが嫌だった。
あの時の気持ちに心が同調して、つい口走ってしまった。
「帰りたくない」
「え」
戸惑い全開の東屋くんの声にはっと我に返り、酔いも少し醒める。
いやいや別に困らせたいわけじゃなくて、ただ単純に帰りたくないんだよ。
顔を上げて周囲を見渡す。
東屋くんも、同じように見渡していたが、私の方が先に行先を見つけた。
「え、と。じゃあ、どこか」
「ネカフェ行くわ、帰るのしんどいし」
「はあ?!」
見つけたネットカフェの看板に向かって、真っ直ぐ歩きだそうとしたが
「ちょ、ちょっと待て!」
何歩もいかないうちに東屋くんに腕を取られ、道の隅に連れていかれた。