イケメン御曹司のとろける愛情
 翔吾さんに気づかれていた驚きが薄れて、ムカムカしてきた。私は彼をキッと睨んで言う。

「ワケなんか、言わなくてもわかるでしょう!?」
「わからない。こんなんじゃ納得できない」

 翔吾さんはあくまでシラを切り通すつもりらしい。だったら。

「私はあなたが思っているような女じゃないの!」

 強い口調できっぱりと言ってやった。私は甘い言葉に騙されて簡単に寝るような女じゃない。イタイアラサーじゃない。

「どういうことだ? 俺はキミを夢に向かって一生懸命に努力する女性だと思ってたが、違うっていうのか?」

 夢に向かって努力しているつもりだし、いつだって夢を諦めたくないと思ってる。でも、私が今、言っているのはそういうことじゃない。

 困惑して彼の手から力が抜け、私はその隙に彼の手を振りほどいた。

「甘い言葉をささやく男に騙されるような女じゃないってことよっ」

 そう言うやいなや私は駆け出した。
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