イケメン御曹司のとろける愛情
「広報部にイメージソングとして奏美さんの曲を推薦したあと……アンバー・トーンで奏美さんと再会したんだ。でも、あんなに『公私混同』をうるさく言う人が近くにいたから……奏美さんの曲が正式採用される前に、奏美さんとああいう関係になったのはまずかったかな、と思ったんだ。付き合っている彼女の曲を推薦したと思われて、広報関係者の心証が悪くなったら困るな。曲の使用契約を結んでから、気持ちを伝えるべきだったのかな、順番を間違ったかなって意味」
「本当に……?」
「奏美さんに嘘を言ったことはないよ」

 そう言った翔吾さんの表情があまりに優しくて胸が詰まり、目に涙が込み上げてきた。

「でも、私……誤解して翔吾さんにひどい態度を取って……」
「今は?」
「え?」

 涙で視界が歪んで、翔吾さんの顔がよく見えない。

「誤解が解けた今は、俺のことをどう思ってる?」

 私は涙を拭って翔吾さんを見た。濡れた視界に翔吾さんがふわりと微笑むのが映る。

 どうして今までちゃんと伝えなかったんだろう。自分に自信がなくて、翔吾さんの気持ちを信じなかった。見えない夢を信じているのに、目の前で私を見つめてくれる人の心を信じないで、なにを信じろというんだろう。

 信じなければ夢は叶わない。信じなければ始まらない。
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