【短編】ずるいよ、律くん
…他は、の三文字が、ふわりと私の心を軽くした。

こうやって、一つ一つのすれ違いを紐解いていこうとしてくれているのが痛いほど伝わる。これがきっと、彼なりの向き合い方なんだ。



「寒いからって、すぐ帰りたがったのは?」

「ツリーを見る必要がないと思ったから」

「……そんなに面倒だったの」

「…もう一回聞くけど」

「うん…?」

「木と人工ライトに頼らないと続かないような関係って必要性あるの?」



いくらか前に、彼が確かに言った言葉だ。そして私が、非リアの考え方だと嘆いた言葉。



「そんな脆い関係だなんて、俺は思いたくないんだけど」

「…え」

「俺と志乃の関係が、そんな不確定なジンクスに左右されるようなものだなんて、俺は思ったことない」

「っ」

「志乃は違うの?」



---ああ、そうか、そうだったんだ。

ツリーのジンクスに永遠を願うってことは、律くんとの関係性に自信がないということだ。
彼がずっとそばにいてくれることを、信用してないと宣言するのと同じようなものだったんだ。

私がジンクスを頼りたがるたびに、彼のことを傷つけてしまっていたんだ。


……通常を遥かに上回る彼の隣で過ごす以上、甘くとろけて胸が締め付けられるような時間なんて到底訪れないと思っていた。

当然、私の愛情の方が彼より何倍も重くて、でもそれは私が勝手に抱いた感情だから、押し付けちゃいけないって。それに何より、同じ分量だけ愛されることを望んじゃいけないって。でも、そうじゃなかったんだ。
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