フェアリーテイルを夢見てる
そしてプロジェクト会議にも顔を出していたのですが、話し合いの過程で、「せっかく絶好のロケーションにビルを建てられる事になったのだから、その中のワンフロアを買い取り、ふと思い立った時に一人で気軽に立ち寄れる部屋を作りたい」と主張したのだそうです。

「もちろん、完全なるプライベート空間なのだからその費用は自分の貯蓄から出す」と。

そこで当時社長であった息子の千一郎さんが、「わざわざそんな物を造らなくても、ビル内で過ごしたいのならばテナントに入る予定のホテルを利用すれば良いのではないか。年も年だし、高層ビルのフロアで一人きりで過ごさせるのは抵抗がある」と返答したそうなのですが、「それでは意味がない」と反論されたらしいのです。

万作さんは外界の景色、特に夜景が堪能できる広々とした空間でゆったりのんびり心ゆくまで過ごしたいと考えていた訳で、ホテルの客室でそれを実現しようとすると必然的にその中で一番上質なお部屋、つまりスイートルームを選ばなくてはいけなくなります。

シングル、ツイン、ダブルでは、いくら室内のインテリアがゴージャスで窓からの景色を楽しめたとしても、肝心要の広さに満足できないからです。

その時点ではまだどのホテルが入るのか、客室の料金設定がどうなるのかは定かではありませんでしたが、相場から考えてスイートルームクラスだと一泊200万円近くになることが予想されました。
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