フェアリーテイルを夢見てる
私の呼び掛けに、ほどなくして目を覚ました巧さんはお決まりのセリフを口にしました。

お互いに朝ご飯を食べ、その後巧さんが掃除や洗濯等の家事をやり終えてから、いざクリニックに向けて出発です。


「こんにちは」

「あ、こんにちは」


秘密のエレベーターで地下5階まで降りた巧さんは、中に居る方とそう挨拶を交わしながら警備員室の小窓前を通過し、その先にある管理室前へと歩を進めました。

今度は足を止めてから室内に向かって挨拶を繰り出します。


「こんにちは田中さん」

「ああ、末永さんこんにちは」


部屋の主である管理人の田中さんが、穏やかな声で言葉を返しました。


「今日はお休みですか?」

「ええ。先月休日出勤をしましたので、その代休なんです」

「それでケイ子ちゃんとお出掛けですか」

「はい。恒例の健康診断に。平日の方が街も空いていてゆったりと行動できますからね。なので、留守の間よろしくお願いします」

「分かりました。お気をつけていってらっしゃい」

「いってきます」


巧さんはそう返事をすると、他の方々も使用している通常のエレベーターへと向かいました。

窓越しのやり取りだったので、田中さんのあのほんわかとした笑顔が見られず、私はとても残念な気持ちです。

部屋の外に出ている時は私と目線を合わせて挨拶してくれたり、頭をなでなでしたりしてくれるのですが。
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