フェアリーテイルを夢見てる
実は私は外出の際、目的地にたどり着くまでは巧さんの手によって運ばれるので、見えない範囲が結構あるのです。

その理由は、私を勝手気ままに自分の足で歩ける状態にしてしまうととても危険だから。

そして世の中には私の存在を苦手とする方もいるようなので、諸々のトラブルを避ける為に、あまり人目に着かないようにして運ばれるのです。

なので私はその間ずっと大人しくしています。

でも、角度によっては周囲の景色をきちんと見る事ができますよ。
あまりにも閉塞的だとストレスがかかってしまいますので、巧さんがあれこれ考えてそうできるようにしてくれたのです。
ただ、やはり今の私の位置からだと、小窓の向こうの田中さんの表情を目にするのは難しいのですよね。

管理室に居るという事は当然、彼はこのビルの管理人さんです。
60代前半、ごま塩頭で、背はあまり高くないですがガッチリとした筋肉質な体躯のおじ様です。
いつもニコニコしていて、その笑顔にとても癒されます。

しかし実は彼、その穏やかな見かけとは裏腹に、柔道の達人で、しかも元刑事さんなのです。

そのキーワードでピンと来たかもしれませんが、小池さんの昔からのお知り合いだそうです。

彼が研修期間中に勤務した所轄署で出会い、その時に色々とお世話になり、お互い柔道に青春を捧げていた事から意気投合してプライベートでも親交が深まって、その後もずっと交流が続いているのだとか。
< 51 / 75 >

この作品をシェア

pagetop