フェアリーテイルを夢見てる
田中さんは仲間内では「落としのナカさん」として有名だったそうです。
どんな粗暴な凶悪犯でも、彼が優しい語り口、慈悲深い眼差しで取り調べを始めると、瞬く間に自供してしまうのだとか。
中には大量の涙を流し、盛大に嗚咽を漏らす人も。

もちろん必要な場面では厳しい態度を取る事もあったようですが、「罪を憎んで人を憎まず」の精神で職務に当たっていたそうです。

まさしく刑事の鑑ですね。

なので田中さんには様々な方が熱い信頼を寄せていたのですが、彼はその職場を定年前に去る事となりました。
長年連れ添った奥様に深刻な病気が見つかり、余命半年と宣告されたのです。
田中さんは『自分が長い間気苦労をかけ続けたからだ』と心を痛め、お仕事を早期退職して奥様の残りの人生に寄り添う決意をしました。
お二人にはお子さんがいなかったので、余計に田中さんは『自分が傍にいなければ』と思ったのでしょう。

そして三年後、残念ながら奥様は他界されました。
しかし、余命半年と言われていたのにそれだけ寿命が伸びたということ、そして田中さんに誠心誠意尽くされて、奥様は「あなたの妻で良かったです」と感謝の言葉を述べながら旅立って行ったそうです。

そして一人になった田中さんは『さて、これからどうしよう』と考えました。
仕事一筋で、たまに奥様と豪華な食事や小旅行に行くくらいで娯楽にお金を費やした事はあまりありませんでした。
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