フェアリーテイルを夢見てる
「……ちょっと、息子に電話をかけてみます」


言いながら、お父さんは田中さんに私を託すと、胸ポケットから電話機を取り出し、画面操作をしてからそれを耳に当てました。


「…ダメだ。繋がらない」

「部屋まで行ってみましょう」


緊迫した声でそう促しながら足早に歩き出した田中さんに続き、お父さんも足を踏み出しました。

一旦地下5階まで戻り、秘密のエレベーターに乗り換えて上階を目指します。


「あ!」


箱を降りてすぐ、田中さんはそう声を発しました。


「たくみ!」


一拍置いてから、私達の背後にいたお父さんも叫びます。

二人はすぐさま巧さんに駆け寄りました。


「巧!大丈夫か!」

「酷い汗だ…」


田中さんがそう呟いている間にお父さんが思わず、という感じで巧さんの肩に手を置き、そのまま持ち上げようとしました。


「いけません。末永さん」


が、田中さんに素早く制されます。


「倒れた拍子に頭を打っているかもしれない。うかつには動かさない方が良い」

「え、あ、そうですね」


お父さんは慌てて手を離しました。


「救急車を要請して下さい。その間、私が呼び掛けてみますので」

「分かりました」


息子の一大事に一瞬取り乱したお父さんでしたが、さすが法律事務所の所長さんです。

すぐに自分を取り戻し、田中さんの指示通りに電話をかけ、冷静に相手とやり取りを始めました。
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