フェアリーテイルを夢見てる
男性として働き盛り、男盛りの旬の時期ですものね。

巧さん自身が自慢しているのではなく、時々ここを訪れる、彼の友人達の会話から知り得た情報です。

当の巧さんは「今は仕事に集中したいので」とことごとくお断りしているようですが。

いずれ末永法律事務所は巧さんが継ぐ事となり、その為の準備をすでに始めているようですし、「仕事云々」も嘘ではないのでしょう。

しかし私は、彼が女性との交際を拒む理由が他にもある事を知っています。

とても悲しく切ない、その胸の内を。


「『ケイ子』っていうのは、初恋の人の名前から取ったんだよ」


私がここに来て少し経っていたある日の深夜、リビングのソファーにて、一人でお酒のグラスを傾け、ほろ酔い気分になった巧さんが徐にそう呟きました。


「その人物は、幼稚園の時の担任の先生の『佐藤恵子』さん。…という事になっている。表向きは」


そしてそれをきっかけに、ポツポツと自分の本心を語り始めたのです。


「明るくて優しくて、とても印象に残っている先生ではあるけれど、正直恋心までは抱いていなかった。本当の初恋の相手は、現在進行形で心底愛している「けいこ」は別にいるんだ。でも、それを周りに悟られる訳にはいかない。秘密にしておかなければならない。本人はもちろん、多くの人を傷付けてしまうから」
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