クールな次期社長の甘い密約

つい俯き気味になる私に森山先輩の檄が飛ぶ。


「ほらほら、そんな暗い顔しないの!」

「はい、すみません」

「いい? あれからもう一週間経つのに大沢さんが受付を異動にならないって事は、谷本さんの推理がハズれてたって事じゃない。もし本当に宮川先生の姪っ子と間違えてたのなら、とっくに異動になってるわよ」


先輩の言葉に一旦は納得したが、ある事に気付いて再び不安になる。


そう言えば、宮川先生は私が常務室に案内して数分で戻って来た。もしかしたら、私の事を話す間もなく常務室を出て来たんじゃ……だとしたら、まだ常務も専務も私が宮川先生の姪だと思っているのかもしれない。


だったらどうしよう……知らないフリをして黙っているのは罪なのかな?


そんな事を考えていたら、自分は何も悪い事をしてるワケじゃないのに凄く後ろめたい気持ちになる。


するとその日の午後、珍しく仕事中に専務からラインがきた。


《今日は早く帰れそうだから飯でも食いに行こう》


専務……


迷う事なく《行きます》と返信するとすぐに既読になり、また音を消したスマホが震える。


《仕事が終わったら地下の駐車場に来てくれ》

《分かりました》


自分のメッセージがディスプレイに表示されたのを確認してスマホを静かにデスクの上に置く。そして覚悟を決め大きく息を吐いた。


ちゃんと確かめてみよう。それで振られたら専務とは縁がなかったんだと諦めるしかない。

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