クールな次期社長の甘い密約

えっ、その娘ってもしかして……私のお母さん? って事は、母親と会長は顔見知り?


意外な形で母親が登場してきたから驚いてしまったが、これはまだ序章に過ぎなかった。


「ワシはその娘さんに名刺を渡して、なんでも相談に乗るからいつでも訪ねてくれと言ったんじゃ。すると今年の初めにその娘さんが訪ねて来てくれてな」

「母が……会長の所に来たのですか?」


会長は嬉しそうに満面の笑顔で何度も頷く。


「うむ、娘さんは自分の娘の就職の件で相談したい事があると言うてな。ワシは初めて大原小隊長のご家族に頼ってもらえた事が嬉しくて天にも昇る思いじゃった」


ちょっと待って。私の就職の件って、私は父親の後輩の町会議員の紹介で津島物産に入社したんじゃなかったの?


「……えっと、確認したいのですが、私が津島物産に就職出来たのは、母が会長にお願いしたから……なのでしょうか?」

「その通り。出来れば受付にと希望されたので、その様に指示しておいた」

「私が受付に配属されたのは、母の希望?」

「そうじゃ。こんな容易な事ではなく、もっと望みはないかと聞いたんじゃが、娘さんはそれだけで十分だと言われてな」


なるほど……宮川先生の姪ではなく、私が受付に配属されたのには、そういう事情があったから。会長の指示なら誰も逆らえないものね。


「しかし、大原小隊長の血を引くお嬢さんとワシの孫が結婚する事になるとは……貴志は頼りないヤツじゃと思っていたが、この事に関しては褒めてやらねばならんな。でかしたぞ! 貴志」

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