クールな次期社長の甘い密約

ドアが閉まる音と同時に"絶望"の二文字が頭に浮かび、大粒の涙が頬を伝う。


私は、どうすればいいんだろう。倉田さんが言った自分の幸せってなんなんだろう……


必死で考えたけど、何時間経っても答えは出なかった。そして、泣き疲れ意識が朦朧とし始めた時、ふと思う。


ーー魔法は、解けてしまったんだ。もう私は、夢見るシンデレラじゃない……


そう、現実に目を向けなきゃダメだ。専務が見ているのは私じゃなく津島物産の社長という輝かしい未来。だとしたら、社長になって夢を叶えたら私は彼には必要のない人間になってしまう。


ドラマでもよくあるよね。自分の出世の為に上司の娘と愛のない結婚して外に愛人を作ってってパターン。


それで専務は幸せなんだろうか? 虚しくはないのだろうか? 私はそんなのイヤだ。愛されていないのが分かっていているのに夫婦で居るなんて耐えられない。


すっかり明るくなった部屋に蝉の鳴き声が聞こえ始めた頃、やっと私の気持ちが決まった――


このまま結婚してもお互い不幸になるだけ。専務の本当の気持ちを確かめてみよう。


そして私は麗美さんにも森山先輩にも相談せず、専務と会う約束をした。彼女達に相談しなかったのは、自分一人で決めたかったから。


後々、その決断が正しかったのか疑問に思う事があったとしも、自分で決めた事なら後悔はしないはず。


誰のせいにもしたくない。私の人生なんだもの。私が決めなきゃ……

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