クールな次期社長の甘い密約

仕事を終え、専務と待ち合わせをしていた地下駐車場に行くと珍しく専務の方が先に来ていた。


そのまま彼のマンションに行くんだろうと思っていたら、専務がどうしても中華が食べたいと言い出したので、六本木駅の近くにある高級中華料理店に行く事になった。


まるでフレンチレストランみたいな白を基調にした落ち着いた雰囲気の店内。次々に運ばれてくるアワビのステーキやフカヒレの姿煮など、高級食材をふんだんに使った料理が所狭しと並べられ、専務はご満悦だ。


でも、私は時々倉田さんと視線を合わせては目を逸らすという行為を繰り返し、なかなか箸が進まない。そして専務が食事を終えトイレに立った時、再び倉田さんと目が合う。


「アナタの幸せが何か……分かりましたか?」

「はい、今日、専務の気持ちを確かめてみます。その答えを聞いた上で判断します」

「……そうですか」


倉田さんとの会話はそれで終わり、専務が席に戻って来ると私達は中華料理店を後にした。


マンションに着くと倉田さんは早々に自室に行ってしまい、私と専務はリビングで眩い夜景を眺めながらワインが入ったグラスを傾けていた。


既に紹興酒でほろ酔い気分の専務が、珍しく仕事の事を熱く語り、自分が社長になったら会社の悪しき風習を変えていくんだと力説している。


「歴史がある会社だからな、色々難しいところはあるが、このままでは時代に取り残される。改革の時が来たんだよ。還暦を過ぎた古い考えの連中には退陣してもらって若い力を入れないと……」


その言葉を聞き、専務が真剣に仕事に取り組んでいるんだという事は分かった。でも……


「……あの、専務にお聞きしたい事があるんですが……」

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