クールな次期社長の甘い密約
「あの……専務が酔って帰って来た時、誰がここまで送ってきてくれたか覚えてますか?」
彼の片方の眉がピクリと動いたのがハッキリ分かり、怒らせてしまったと思った。が、専務は冷静に「倉田だろ?」って答えたんだ。
「知っていたんですか?」
「そりゃそうだろ。あの夜、俺は倉田と飲んでたんだからな。アイツ以外、考えられない」
「倉田さんと二人で? 他に誰か居たとか?」
専務の箸が止まり、私をマジマジと見つめる。
「何が言いたい?」
「そこに、木村さんが居たんじゃないかと思ったので……」
彼から視線を逸らす事無く思い切った質問をぶつけてみたが、その声は震え、心臓はバクバクだった。
「木村? どうしてそう思う?」
専務の探る様な視線が怖過ぎて体が固まる。でも、ここまできたら引き下がれない。
「あの日、私、専務室で専務と木村さんの会話を聞いてしまったんです」
「はぁ?」
「木村さんが、その……専務の子供を妊娠したって……」
内容的には、婚約者が元カノを妊娠させたのだから上位に立てるのは私の方だ。でも今の状況は、私が専務に睨まれ完全に委縮している。
「盗み聞きとは趣味が悪いな」
「盗み聞きするつもりはありませんでした。たまたま偶然聞いてしまって……」
「それで茉耶は木村の言っていた事を信じたのか?」
その質問に即答する事が出来ず言葉を濁すと専務が悲しそうに項垂れた。
「婚約者の俺を茉耶は信じられなかったんだな……」
「あ……」