クールな次期社長の甘い密約

仕事を終わると私は一目散に専務と待ち合わせをしている地下駐車場に向かった。


専務と同棲する様になってからは、専務が早く帰れる日は必ず一緒に帰っている。だから最近は、麗美さんや森山先輩とご飯を食べに行く事は滅多にない。


それがちょっぴり寂しかったけど、今日はそれが有り難かった。木村さんの妊娠&寿退社を知った森山先輩が大荒れで、どうにもこうにも手が付けられず、専務と待ち合わせをしてると言って逃げて来たんだ。


シンと静まり返った駐車所に社用車のドアが開く音が響く。でも、ドアを開けてくれたのは、会社が契約しているハイヤー会社の出向社員。あの人じゃない……


「有難う御座います」


後部座席に乗って専務を待っていると程なく専務が現れ、動き出した車の中で機嫌よく冗談を言って笑っていた。


木村さんが会社を辞めるから機嫌がいいのかな? 


つい下衆の勘繰りでそんな事を考えてしまう。


マンションに帰り、すぐに夕食の用意をして専務とダイニングテーブルを挟んで向き合って座ると笑顔だった専務の顔が曇る。


「魚かぁ~。俺は肉が食いたかったんだが……」

「あ、ごめんなさい。昨日はお肉だったから、今日はお魚にしたんですけど気に入らなかったですか?」

「まぁいい。でも、今度からは俺に確認してから作ってくれ。倉田もそうしていたからな」


専務の口から倉田さんの名前が出てくるとは思わなかったから驚いた。でもそれは、今まで専務に言えなかったあの事を言うチャンスの様な気がして……

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