クールな次期社長の甘い密約
でも、突然そんなラインが来て、勘のいい麗美さんが不信に思わないはずがない。なぜ会社を辞めた木村さんの住所が知りたいのかとしつこく聞いてくる。
倉田さんが会社に来なくなったのも何かあるんじゃないかって勘ぐっていたから余計だ。もう黙っているのは限界かも……
木村さんと会って話しをした後に必ず説明すると約束し、やっと木村さんの住所を教えてもらえた。
早速、その日の仕事終わりに麗美さんに教えてもらった住所に向かう。
閑静な住宅街に建つシックなダークブラウンのマンション。そこが木村さんの自宅だった。もちろん玄関はオートロックで自由に建物内に入る事は出来ない。
玄関のインターホンの前に立ち、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
木村さんにとって私は憎い恋敵。間違いなく招かれざる客だ。快く会ってくれるとは思えない。でも、ここまで来たんだ。覚悟を決めなくちゃ。
生唾を飲み込み部屋番号を押すが、なんの反応もない。もう一度押してみるが、やっぱり返答はなかった。
留守か……
一気に体の力が抜け、暫くその場にしゃがみ込んでいたら、後ろから近付いてきた足音がピタリと止まり、聞き覚えのある声がする。
「大沢さん……ここで何してるの?」
見れば、レジ袋を下げた木村さんが戸惑いの表情で私を見つめていた。
「あぁ……良かった。私、木村さんにどうしても聞きたい事があって……」
「私に聞きたい事? 悪いけど、話す事は何もないわ。帰ってくれる?」
今度は警戒心まる出しで睨んでくる。