クールな次期社長の甘い密約
「知ってしまいましたか……」
「はい、倉田さんがどうしてあんな無謀な提案を受け入れたのか、その理由も全て聞きました」
「理由を聞いたのかね?」
常務が倉田さんから木村さんの子供を認知すると打ち明けられた時、自分の子供でもないのに、なぜそんな事をするのかと聞いたが、倉田さんは理由を言わなかったそうだ。
「倉田さんは、自分は一生結婚しないつもりだから木村さんの子供を認知しても問題はないと言ったそうです。結婚をしない理由は、心に決めた女性が他の男性と結婚するので、自分はその女性が幸せになるよう見守るつもりだって……」
この話しをするとダメだ。胸が苦しくなって、また涙が溢れてくる。
「倉田君がそんな事を……その心に決めた女性というのは、大沢さん、アナタの事ですね?」
肯定も否定も出来なかった。ただ、流れ落ちる涙を拭う事しか出来ない。すると常務が「その涙のワケを聞かせてくれないかね?」と優しい笑顔で私を見つめる。
「ワケ……ですか?」
「僕には、その涙が倉田君を好きだと言っている様に思えるんだが……違いますか?」
もう自分の気持ちを抑える気力は残っていなかった。私がどれだけ倉田さんを好きか、その想いが堰を切った様に言葉となって溢れ出す。
「好きです。倉田さんが大好きです。彼に会いたい。彼の傍に居たいんです」
立ち上がった常務が私の背中を擦り何度も大きく頷いている。
「アナタの気持ちはよく分かりました。これで僕も決心が付きました」
「決心?」
「えぇ、前から考えていた事があるんです」