クールな次期社長の甘い密約

――胸に響く重い言葉だった。


麗美さんのその言葉が心の奥底に封印してきた過去を呼び起こす。


麗美さんになら話してもいいよね……


すっかり氷が溶けてしまったメロンサワーを一口飲み、今まで誰にも打ち明けられなかった過去を話す決心をする。


「……私、物心ついた頃から凄い人見知りで、誰かに見られるだけで緊張して上手く喋れない子供だったんです」


――私がこんなに人目を避ける様になったのは、小学生の頃。母親の自分勝手な思い込みでそうなってしまったんだ。


母親は東京生まれの東京育ち。大学を出た頃、ちょうどバブルで世の中は浮かれていた。就職したばかりの母親も御多分に漏れず毎夜遊び歩き、ある夜、チャラい男達にナンパされた。


しつこく絡んでくる男達と口論になって強引に車に乗せられそうになった時、登場したのが後の夫となる私の父親だった。


父親は実家の農業を継ぎ、その日は農業組合の親睦旅行でたまたま東京に来ていた。母親が言うには、運命の出会いだったそうだ。


普段から肉体労働をしている父親に都会のひ弱な男が勝てるはずもなく、その勇ましい姿に一目惚れした母親が後先考えず父親を田舎まで追いかけて行き、押しかけ女房になったらしい。


でも母親はバブル熱から覚めないまま田舎に来たから派手なまま。イケイケ姉ちゃんと呼ばれ近所でも有名だったとか……


そして、娘の私が産まれると私にまで奇抜な格好をさせ、幼稚園に入った頃には金髪になっていた。幼心に、それがとても苦痛だったのを覚えてる。

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