クールな次期社長の甘い密約

「木村ってね、秘書課の木村瑞貴(きむら みずき)の事。私の同期なの。私、木村が大嫌いなのよ。だから、あの娘が専務と噂になってるって聞いて悔しくて……余計にムキになってたのかもしれない」


あ……麗美さんが言ってた専務と噂になってた秘書課の女性っていうのは、木村さんって人の事だったんだ……


その木村さんは専務室の役員受付になってから専務の出張に同行したり、プライベートでも食事に行ったりしていたらしい。


森山先輩と木村さんは入社式で些細な事で喧嘩して以来、事あるごとに衝突してきた犬猿の仲。


そんな木村さんが専務と付き合っていると聞いた森山先輩は落胆し、一度は会社を辞めようと思ったそうだが、このまま負け犬の様に尻尾を巻いて去るのは自分のプライドが許さないと思い直し、専務を奪ってやろうと決心した。


「でもね、専務を目の前にするとアピールどころか全然話せなくて……でも、負けは認めたくない。正直、そんな自分にうんざりしてたのよ」


こんなに弱々しい森山先輩を見たのは初めて。本当に、その木村さんに負けるのがイヤだったんだな。


「専務が選んだ相手があたなってのが意外だったけど、今頃、木村がショックを受けていると思うとなんか嬉しいわ」


先輩の言葉に嘘はない。豪快に笑う彼女を見てそんな気がした。


「いい? 専務をしっかり掴まえておくのよ! 木村に取られる様な事があったら、大沢さんの事、本気で恨むから!」

「そ、そんな……」


あぁ……一難去ってまた一難だ……

< 92 / 366 >

この作品をシェア

pagetop