クールな次期社長の甘い密約
「茉耶ちんが……癒して……くれる?」
森山先輩は呆然と立ち尽くし、私は脱力して固まる。その間も専務は、まるで子猫をあやす様に私の顎を人差し指で撫で、目尻を下げて優しく笑っていた。
そして「じゃあ、また電話する」とトドメの一言を残しカウンターから離れて行く。
専務の後ろ姿を見つめながら、あぁ……終わった。って心の中で呟き、横目で森山先輩の表情を盗み見ると予想通り、顔を真っ赤にしてワナワナ震えている。
ヤバい! そう思った時には既に手遅れで、私の体は壁に押し付けられていた。
これが、噂の壁ドン? 初体験の壁ドンの相手が森山先輩だとは……ちょっと微妙だ。でも、今はそんな事考えている場合じゃない。
「おおさわぁ~っ! ねぇ、"ちん"って何よ? 癒してくれるって何よ? 電話するって……なんなのよ?」
「そそそ、それは……あの~」
なんとか誤魔化そうと頑張ったけど、この状況ではどう考えても無理だ。てなワケで、全て吐露してしまった。
当然、血の雨が降るだろうと覚悟していたが、予想に反して森山先輩は冷静に私の話しを聞き、その後も真っすぐ前を見据えたまま微動だにしない。しかし、それがかえって不気味だった。
そんな状態が一時間ほど続いた時だった。先輩がようやく口を開く。
「まさか、つい最近までダサダサで地味子だったあなたに負けるとは……でも、木村も振られたって事だから良しとするか……」
「えっ?」
木村さんって誰?