クールな次期社長の甘い密約
「女性に対して……それも経験のないあなたに、言うべき言葉ではありませんでした」
そんな素直に謝られたら戸惑ってしまう。
「あ、私こそ、怒鳴ったりして……すみませんでした」
「いえ、大沢さんは悪くありません。私が焦って急ぎ過ぎたのです。不快な思いをさせてしまい本当に申し訳ありません。私が言った事は忘れて下さい」
焦って急ぎ過ぎた? 倉田さんは何をそんなに焦っていたの?
その意味を聞こうとした時、倉田さんのスマホが鳴った。彼はディスプレイを確認すると前を向いたままそのスマホを私に差し出してくる。
「専務からです。運転中なので出てもらえますか?」
「あ、はい」
ディスプレイの上で指を滑らせスマホを耳に当てたのと同時に愛しい人の声が聞こえてきた。
『俺だ。無事到着したよ。茉耶は? ちゃんと連れてきたか? あ、それと、ホテルの予約は取れたか?』
「ホテル……ですか?」
『えっ? 茉耶ちんか?』
専務は電話に出たのが私だと分かるとしらじらしい咳払いをして妙に明るい声で言う。
『いや、なんでもない。茉耶ちんが迎えに来てくれて嬉しいよ。じゃあ、一階の第二旅客ターミナルの入口近くで待っているから……』
あ……切れちゃった。
スマホを倉田さんに返した時にはもう駐車場に到着していて、私達は車を降り、専務との待ち合わせ場所に急ぐ。その道すがら倉田さんに、さっきの事を聞いてみた。
「えっと……倉田さんが車の中で言ってた事なんですが、いったい何を急いでいたのですか?」