クールな次期社長の甘い密約

けれど、倉田さんは「その話しは終わりましたから」って勝手に話しを完結させてしまい答えてくれない。


専務といい、倉田さんといい、なんかモヤモヤするなぁ~。


唇を尖らせ隣を歩く倉田さんの顔を見上げると彼は横目で私の顔をチラッと見て急に歩く速度を上げる。あっとう間に倉田さんとの距離が開いてしまい慌てて彼を追う。


もぉ~自分勝手なんだから~! でも、こんなに急ぐって事は、一刻も早く専務に会いたいって事だよね。


でも、いつも専務と一緒なのに、どうして今回は出張に同行しなかったのだろう?


その疑問を大きな背中に問い掛けてみると――


「一応、私は秘書課の課長ですからね。何か問題が起こった時、迅速に対応しなければなりません。なので、一週間以上も会社を留守にするワケにはいかないのです」


少しだけ振り返った倉田さんがめんどくさそうに答え、更に足を速める。


「そうですか……でも、専務が居なくて一人で寂しかったんじゃないですか?」


我ながら確信をついたいい質問をしたと思ったのに、倉田さんは完全無視。これも不発かと肩を窄めた時だった。突然倉田さんが「専務!」と叫び、猛ダッシュで駆けて行く。


人混みを押し退け、専務の元へと急ぐ倉田さんの姿を見て確信した。


やっぱり倉田さんは専務の事が好きなんだ……あれはどう見ても恋人との再会を心待ちにしていた乙女だ。


なんとも言えない気持ちで私も足を速めるが、視界に入った専務が一人じゃない事に気付き、思わず立ち止まる。


あっ……あの人は、確か……

< 96 / 366 >

この作品をシェア

pagetop