となりのお兄さん
食事中も、ペンと紙を片手にしている聡さん。
食事を出した時はありがとうと言ってわらってくれたけど、それ以降は笑顔を見てない。
なぜかといえば、ずっと私を見てるからだ。

ご飯を食べる私をずーっとだ。

「あのぉ・・・聡さん?」

なに?と、真剣な眼差しで私を見つめながら問いかけを返す。
「そんなまじまじと、見つめられたら…恥ずかしいです。」

顔が暑いのできっと真っ赤になっているだろう顔を手でパタパタと仰ぐ。
聡さんは、え?あっあぁ!とハッと気がついたように目線を料理に戻す。

「じゃあ、食べ終わってからにするよ」

そう言って、やっと食事に手をつける。
聡さんは、唐揚げを一口食べると

「ん、んん!おいしい!」

と言ってくれる。
ご飯と、唐揚げを交互に食べる聡さんは、少し子供らしくて可愛かった。
モグモグと、頬を膨らませて、食べていてリスっぽいなぁ…とも思ったりもした。

「ん?なぁに?」

私がニヤニヤしていたからだろう、聡さんが聞いてきた。

「あっ、いや。ご飯を頬張る姿可愛いなぁって思って・・・」

そういうと、聡さんはカァっと顔を真っ赤にして箸や食器を置いて手を膝の上に置く。
それを見て、照れているんだなぁと実感する。

「なっ、うぁ・・・あ、綾音ちゃん!お、大人をからかうんじゃありません!」

と、言われてしまった。
もちろん、顔を真っ赤にしながらだけれど。

そう言うと、また先ほどと同じようにごはんを食べ続ける。
でも、先程から気になっていることがある。
サラダが減っていないのだ。

私が作ったのはグリーンサラダと言って。
レタス等を水で洗い、ちぎった簡単なものなのだが。

「聡さん、どうして、サラダたべないんです?」

そう聞くと、聡さんは、口に入っているものを飲み込み、箸を唇に当てて言う

「あはは、僕昔からレタスって苦手なんだよ・・・水っぽいのがダメでね」
といった


そっか、聡さんレタス嫌いなんだ。
これからは入れないようにしよう。
このサラダは私が食べればいいしね。

そう思っていると、聡さんが言ってきた。

「こんなに美味しい食事を作れるなんて綾音ちゃんは、いいお嫁さんになるよ。」

と。

私は、聡さんのお嫁さんになりたい。

その一言は私の喉に突っかかって出てこなかった。
言えたらどれだけ楽だろうか?
でも、この関係を壊したくない。ぎこちない関係になりたくない。

だから、今はこの関係で・・・。

今はこの関係で満足だから・・・。
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