ドストライクの男
「気色の悪いことを言うな!」
光一郎は喉元を押え、ゲッと眉をしかめる。
「俺は女好きだ」
「俺? 女好き……Mr.光一郎は女好きなのですか」
「違う! 女が好き……イヤ、だから」
訂正すればするほど深く墓穴を掘るようだ。
あらぬ方向に話が行くのを三日月は面白そうに聞いている。
「とにかく、俺の好きなのは可愛いおバカちゃんだけだ」
テンパり過ぎて自分で気付いていないのか、僕から俺に変わった光一郎が熱い視線を小鳥に向ける。
どさくさ紛れに何を言っている、と光一郎をチラ見し三日月はプッと吹き出す。
「それは聞き捨てならないな」
そこに新たな声が登場する。
「俺も彼女に関心がある」
黒いスーツ姿でシャンパングラスを手に、敵対心丸出しの秋人が光一郎を睨む。
「桜木社長、デートの申し込み、今、してもいいですか? 小鳥さん、パーティーが終わるまでズット俺の側にいて下さい」
「何!」と光一郎が秋人を睨み返す。
その時、「キャーッ、やだぁ」とベリ子が現れ、乙女の祈りポーズでキラキラの瞳を四人に向ける。
「小鳥を巡り男たちが争う図、ドラマみたい! って小鳥ちゃんも来たのね」
ウットリするベリ子に、その場の雰囲気が一気に脱力する。
小鳥は、助かった、とベリ子の背に隠れる。
「あの、申し訳ございませんが、私、ベリ子さんとご一緒しますので……」
「何を言っているのよ。皆で楽しく過ごしましょう!」
小鳥の言葉を遮り、ベリ子は王子二人と王様に目を走らせる。