天に降る雪
永遠の花畑
お花畑の先には、またお花畑。ずっとお花畑。不思議なことにお花を踏んでここまで来たはずなのに踏んでいない。そして私の後ろには道は出来ていない。私はその時初めて足で歩いていないことに気が付いた。これは微妙にリニアモーターカーの様な感じで浮いているのかもしれないし、もしかすると足なんてもう存在しないのかもしれない。
先程のかすかな香りが少しずつ強くなり誰かの歌声も近くに聴こえてくるようになっていた。
このただだだっ広い場所ではその方向へ足を運ぶ!?しか今の私には出来なかった。この世界ではもしかするとそれが自然なのかもしれない。

少し行くと遠くに四人の白い人影がみえた。私は生きている時から視力だけは人並外れてよかった。四人に気付かれないように私は低姿勢にし、お花の影に隠れしばらくそっとその様子をうかがってみることにした。
真ん中で踊っている一人は赤い衣装で金髪、もう一人のセンターは青い衣装の短髪、向かって左脇の紫の衣装の銀髪のロン毛で、向かって右側の黄色い衣装は天然パーマのくるくる茶髪だった。
そんな四人は、背格好は似ているもののとても個性的で、四人とも足下までスルッと伸びた白いマントを付けていた。
四人は、ダンスなのか目まぐるしくクルクルと入れ代わって歌を歌っていた。この場所での歌は声に出すのではなく、なんというのか、ハーモニカの音をもっと透明にしたようなそんな響きのようにも聞こえてくる。メロディーはなくまるで雨の雫のような風が吹く時のような言い表せないものである。
四人がクルクルと回る度に白いマントがひるがえりなびいていた。
「まるでアイドルね。クスクス」
私は滑稽な姿にたえきれず思わず笑ってしまった。
とたんに彼らは幽霊のように浮遊しスッと近寄ってきて私を物珍しそうに見てそっと取り囲んだ。

まず、赤い衣装の金髪イケメンが万勉の笑みで話し出した。
「俺、摩訶迦葉(まかかしょう)みんなのリーダーやってます。"しょうくん"って呼んでくれよ!ヨロシクね!」
次に青い衣装の短髪イケメンは
「僕は、須菩提(しゅぼだい)といいます~。"だいちゃん"って呼んでね。」
そして、紫の衣装の銀髪の長い髪をかきあげながら表情を変えずクールに自己紹介
「私は迦旃延(かせんねん)かねたんです。特技は数百年前のことでも暗記できてます。ハイ、よろしくお願いいたします!」
黄色い衣装の明るい笑顔で
「僕は、目連(もくれん)自慢じゃないけど歌が一番上手なんだ。僕のことは、もっくんでいいよ。」
自己紹介まで、まるでアイドルだった。
赤い衣装の金髪イケメンリーダーが続けて話した。
「俺たち、ここへ来てすごく長いんだ。ここにはほら、花しかないだろう。たまに花をいじめたり、四人で喧嘩してみたり、ここにはいない空想を作り出し悪口を言ってみたり、身体を傷付けあったりしてたんだ。暇すぎて暇すぎて色々な遊びを考えてちょうど今は退行して人間の若者の遊びを真似している最中なんだよ。」
「えっと…。リーダーのしょうくんさん、私は何処にいけばいいんでしょうか?何をしたらいいのでしょうか?」
「ここからは出られないよ。だって俺たちだってずっとここにいるんだからね。それよりさ、ここまで来る人間は何百年か何千年か、とにかく久し振りなんだ。一緒に遊ぼうよ。君は何をして遊びたい?教えてよ。」
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